三酸化ヒ素（As₂O₃）とは

三酸化ヒ素（As₂O₃）は、無色または白色の結晶性固体で、毒性が非常に高いことで知られる無機化合物です。別名「ヒ素白」とも呼ばれ、無臭で水や酸に可溶です。主にヒ素鉱石の精錬過程で副産物として得られ、自然界ではリアルガーやオルピメントといった鉱物中に含まれています。かつては殺鼠剤、防腐剤、木材防虫剤などに広く使用されていましたが、その高い毒性から現在では多くの用途が制限されています。一方で、医療分野では一定の管理下において急性前骨髄球性白血病（APL）の治療薬として使用されており、FDA（米国食品医薬品局）によって承認されています。

三酸化ヒ素は、細胞内のタンパク質と結合し、酵素の働きを阻害することで細胞死を引き起こします。これにより、がん細胞の増殖を抑える効果があります。しかし、その使用は極めて慎重に行う必要があり、医療用であっても厳格な管理とモニタリングが欠かせません。また、工業的には特殊なガラスや半導体材料の製造にも用いられることがあります。取り扱いには防護具の着用と、ヒ素中毒への万全な対策が必須です。

※一部商社などの取扱い企業も含みます。