硝酸ビスマス（Bismuth nitrate Bi(NO₃)₃）とは

硝酸ビスマス（Bismuth nitrate、化学式：Bi(NO₃)₃）は、ビスマスと硝酸の反応によって得られる白色または無色の結晶性化合物です。湿度に敏感で、水分を吸収して加水分解しやすい性質を持ちます。一般的には五水和物（Bi(NO₃)₃·5H₂O）として流通しており、空気中でも徐々に分解されやすい不安定な物質です。硝酸ビスマスは、有機合成において触媒や酸化剤として用いられることが多く、特にアセタール化や酸化反応などで活躍します。また、医薬品分野では、かつては消化器系の薬剤（例：次没食子酸ビスマスなど）の原料として使用されたこともありますが、現在はより安全で安定したビスマス化合物が主流になっています。

さらに、硝酸ビスマスは化粧品や顔料、花火、分析試薬としても使用されることがあります。たとえば、ビスマスの特性を生かして、特定の金属イオンの定性分析に利用されます。安全性に関しては、ビスマスは比較的毒性の低い金属とされていますが、硝酸成分を含むため、皮膚や目への刺激性があります。取り扱う際は保護具を着用し、密閉容器で保管することが推奨されます。また、酸化剤としての性質を持つため、可燃物との混合には注意が必要です。

※一部商社などの取扱い企業も含みます。