AFM / メーカー2社一覧
AFMとは
AFM(Atomic Force Microscope)は、カンチレバーと呼ばれるプローブとサンプル表面の原子との間に作用する力を検出し、これをスキャンしてサンプルの微細な表面構造を視覚化する顕微鏡です。それからそれは原子間力顕微鏡と呼ばれます。 走査型トンネル顕微鏡は、表面の微細構造を可視化する顕微鏡として長い歴史がありますが、カンチレバーとサンプルの間にトンネル電流を発生させて測定するため、導体サンプルの測定に限定されています。田。 AFMは、導電性サンプルから絶縁体や生物学的サンプルまで、幅広い物体を測定できることを特徴としています。
AFM(原子間力顕微鏡)の選び方
必要な分解能と測定範囲
測定の目的により、必要な分解能や測定範囲が異なります。例えば、研磨加工後の面粗さ(Rq)が数nm程度であれば安価なAFMでも評価可能ですが、CMP研磨による試料の0.1nm未満の粗さを評価する場合には、高分解能・低ノイズのハイエンド機が必要です。また、生体試料の液中測定では、XY方向に数10µmを超える細胞を観察するか、タンパク質などの生体分子を100nm四方の範囲で観察するかにより選ぶAFMが異なります。ほとんどのAFMはナノスケールの位置制御をピエゾ素子(スキャナ)で行いますが、その伸縮範囲は限定的です。市販のAFMのXY方向のスキャナサイズは10~100µm、Z方向は1~20µm程度です。測定範囲がスキャナの範囲を超えないか確認する必要があります。異なる範囲のスキャナに交換可能な装置もあります。
装置の分解能はスキャナの細かい制御精度と装置内のノイズレベルで決まります。分解能はメーカーの装置仕様のADC/DACビット数で計算できますが、実際にはノイズレベルが分解能を決定します。近年の半導体技術の進歩により、ADC/DACの性能は向上していますが、ハイエンドAFMを選ぶ際には「ノイズレベル」を参考にするべきです。高分解能が求められる場合、外部の振動や音などのノイズ対策として防振台や防音箱が必要です。
ミリメートル単位の移動や位置合わせが必要な場合、電動ステージの有無と可動範囲を確認します。200mmまたは300mmのウェハーをカバーできるモーターステージ付きのAFMもあります。
装置のスキャン範囲
AFMで表面を測定するためには、試料を安定に設置し、プローブが表面にアクセスできることが必要です。
板状のもの
厚さが数ミリ程度の板状のものであれば、どのAFMでも測定可能です。基板、スライドガラス、ウェハー、切片、ディッシュなどが該当します。試料台に収まらない場合は、切断して小片にします。磁石で固定するタイプのAFMでは金属の円盤に試料を固定します。
高さ・重量のあるもの
数センチを超える厚みがある試料や容器内の試料は、プローブ先端が先に接触してしまい測定できないことがあります。AFMのカンチレバーのマウント方法やヘッドユニットの構造を確認し、試料の大きさや重量に応じて選定します。最大荷重も確認しましょう。試料を小さくできない場合、大型ステージを持つAFMやカスタマイズAFMを検討します。
装置の試料サイズとステージ形状
試料の大きさや高さがステージに入るか、容器が干渉しないかを確認します。例えば、柔らかいサンプルや動くサンプルの場合、プローブの走査中に動いたり変形することで正確な像が得られないことがあります。特にライフサイエンス分野の液中測定でよく見られます。このような試料を測定する場合、プローブが試料に与える力を小さくする測定モードを備えたAFMを選びます。カンチレバーを共振周波数で振動させるダイナミックモードは各社とも標準装備しています。
さらに高度な解決策として、高速に走査を終わらせる高速AFM(HS-AFM)があります。これは1秒間に数枚から数十枚の撮像が可能です。
プローブの選定
使用するプローブも目的に合わせて考慮します。形状、材質、表面材質などが異なるさまざまなプローブがあります。特に、プローブの形状は分解能や得られる形状に大きな影響を与えます。電気測定や磁気測定には金属膜をコートしたプローブや導電性のダイヤモンドやPtSi製のプローブがあります。目的に応じたプローブの選定について、AFMメーカーやカンチレバーメーカーに問い合わせると良いでしょう。
AFM(原子間力顕微鏡)のその他情報
AFMを使用することで分かること
AFMを活用することで、引力、斥力、探針先端と試料表面の付着力、結合力などを検出できます。触媒分野でも活用され、単結晶のゼオライトや層状の粘土鉱物の原子観察が可能です。AFMは特別な前処理を必要とせず、大気や液体中でも測定可能で、表面局所領域での吸着現象や化学反応過程の測定に使用されています。例えば、有機化合物の吸着過程の測定などが可能です。探針を修飾することで特定の力を選択的に測定することもできます。
AFMのフォースカーブ
フォースカーブは相互作用力の測定に活用され、探針の往復運動により測定試料と探針の接触と引き離しを繰り返して測定します。これにより力と距離の関数からフォースカーブが得られます。カンチレバー不安定性によりフォースカーブがゆがむことがあり、適切なカンチレバーの選択が必要です。空気中でのフォースカーブ測定では、ファンデルワールス力の他に表面張力に基づく凝着力とメニスカス力が測定されます。固体表面の酸-塩基評価にも応用されています。
AFMとSTMの違い
STMは超高真空中で高い原子分解能を持ちますが、導電性のない試料や大気中での汚染の影響を受けやすいです。一方、AFMは試料と探針の間に働く力を検出するため、導電性がない試料でも測定でき、大気中でも測定が可能です。
AFMの使用用途
AFMは、ナノスケール(1nm = 10-9m)からオングストローム(0.1nm)レベルで表面の不均一な構造を明らかにすることができるため、主に産業分野での検査目的で使用されます。 たとえば、半導体基板の表面処理の均一性や粗さを測定したり、金や銅などの金属を使用した電極のめっきの腐食や劣化を検査したりするために使用されます。また、タンパク質などの生体分子の反応や構造変化を最小限の侵襲で観察する研究にも利用されています。
AFMのメーカー一覧
※一部商社などの取扱い企業も含みます。